フリマを利用したことはありますか?
近年メルカリをはじめとした便利なアプリの台頭により簡単に誰でも利用できるようになったため、みなさんの中にも使ってみたいという方が、少なくないように思います。
しかし、いざ出品しようとすると、より高く売りたい欲望の中で、買い手のつく適切な値段設定をどうするのかは、頭を悩ませる難しい問題です。
本記事では、筆者の手元にある漫画「ワンピース」(90巻分)を例に、過去の取引データを元にどのような売り方をすれば高く売れるのかについて、考察してみました。
今回の結論
では、先に今回の分析によって得られた結論を述べたいと思います。それはつまり、
所有している1~90巻に
91~100巻を買い足し、送料は出品者負担で20,000円で売る!
です。わたし自身、所有していなかった91~100巻を買い足してから売った方が、高く売れるという結果になったことは、驚きでした。
ここからは、なぜこの結論に至ったのかを説明していきます。
引用したサイト
今回、分析の際に利用した情報は、メルカリのサイトからクローリング&スクレイピングして取得したものです。取得した情報を加工し、分析に利用した情報は以下の項目になります。
- 販売結果 :出品された商品が購入されたかされていないか
- 価格 :出品者が設定した価格
- 1冊あたりの価格 :価格をまとめ売りの冊数で割ったもの
- まとめ売りの冊数 :何冊まとめて出品しているか
- 配送料の負担 :送料を出品者・購入者どちらが負担するか
- 商品の状態 :6段階で評価
また今回の分析では、出品された商品の中でも、購入された商品のデータのみを扱いました。
分析概要
取引価格に影響を与えている因子を
- 何冊まとめて出品しているか
- 送料の負担はどちらか
- 商品の品質
の3点と仮定し、その価格に対する影響について分析をしました。
早速、各因子についての分析結果を見ていきましょう。
91~100巻を買い足す理由
このグラフは、横軸が「何冊まとめて出品しているか」、縦軸に階級ごとの「度数(棒グラフ)」と「1冊あたりの価格(折れ線)」です。私の場合、1~90巻を所持しているので「86~90冊」が該当します。
ここで、注目したい部分(赤丸の部分)を整理し、漫画を90冊持っている自分に対して、100冊持っている人を比べていきます。
90冊持っている人 → 1冊あたり111.4円 → 111.4円×90冊=10,026円
100冊持っている人 → 1冊あたり153.1円 → 153.1円×100冊=15,310円
これを見ると、100冊持っている人の方が(15,310円-10,026円=)約5,300円程高く売れる傾向があります。
ブックオフオンラインで「ワンピース91~100巻」の相場を見たところ、1冊あたり300円なので10冊は3000円で購入できます。したがって中古で漫画を10冊買い足した場合、その分を差し引いても、5,300円-3,000円=2,300円高く売れるということがわかります。なので、1~90巻をそのまま出品せず、91~100巻を買い足して出品する方が賢明です。
送料は出品者負担が良い
「着払い」である商品はなんとなくイメージが悪いと思いませんか。ここでは、送料の負担が価格にどう影響するかを見ていきたいと思います。
下のグラフは、横軸が「着払いか送料込か」、縦軸に階級ごとの「度数(棒グラフ)」と「1冊あたりの価格の中央値(折れ線)」です。「送料込」は送料が出品者負担、「着払い」は購入者負担であることを指します。
そもそもどちらが主流なのかという点において圧倒的に「送料込」の取引であることがわかりましたが、さらに送料が出品者負担か購入者負担かで価格差がどれだけあるかを、100冊あたりの価格に換算して考えると以下のようになります。
出品者負担 → 141.9円×100冊=14,190円
購入者負担 → 109.3円×100冊=10,930円
これを見ると、送料は出品者が払った方が(14190円-10930円=)約3,300円程高く売れています。送料が約1,000円かかると仮定しても、それを差し引いて2,300円も高く売れるわけです。
この結果から、送料は出品者負担にした方が、高く売れそうだと分かりました。
商品の状態はできるだけ良くしたい
メルカリでは、商品の状態を6段階に分けて評価しています。
商品の状態が悪いほど価格は低くなりそうだと想像できますが、どれくらいそれが価格に影響するのかまでは分かりません。
そこで、グラフにしてみました。
下のグラフは、横軸が「商品の状態」、縦軸に階級ごとの「度数(棒グラフ)」と「1冊あたりの価格の中央値(折れ線)」です。
折れ線グラフを見ると、予想通り、状態が悪くなるにつれて価格が下がる傾向にあります。その中でも、商品の状態が悪い方の3段階(赤枠)では価格が急激に落ち込んでいるように見えます。
では実際に、商品の状態が悪い方の3段階でどれくらいの価格差があるのかを、100冊あたりの価格に換算して見ていきます。
「やや傷や汚れあり」 → 142.9円×100冊=14,290円
「傷や汚れあり」 → 122.4円×100冊=12,240円
「全体的に状態が悪い」 → 85.0円×100冊=8,500円
一番悪い状態から、1段階上がるにつれて約3,800円、2,000円と価格が高くなり、2段階で見ると5,800円高くなる傾向があります。
私の場合、明らかに状態が悪い漫画は3冊だけなので、中古で状態が良いものに差し替えて、出品する際は「やや傷や汚れあり」と状態を良く設定した方が、中古で購入した金額を差し引いても、5,000円以上高く売れることがわかりました。
よって、その漫画3冊は差し替えて出品することにします。
分析のまとめと最終的な出品価格の決め方
分析の結果で得られた私が出品する際の条件で、過去に購入された商品を抽出し、1冊あたりの価格の分布を図にしてみました。
分布は正規分布に従っているようにも見えます。外れ値を除き、平均と標準偏差を計算すると、それぞれ154.0円、22.75円となりました。
正規分布の性質上、平均+2標準偏差で設定した価格は約2.5%の人の購入があると読み取れます。この2.5%の人たちは、メルカリでの漫画の相場がわからないまま高い価格の商品を購入してしまったのでしょうか?
理由はどうあれ統計的には、平均+2標準偏差の価格設定にしておけば、買い手を見つけることが出来そうだと分かります。
特に急ぎで売り切る必要がないのであれば平均+2標準偏差である154.0円+2×22.75円=199.5円、100冊で19,950円、つまり約20,000円で出品して様子を見る、という判断ができそうですね。
最後に
私が漫画「ワンピース」100冊をメルカリでなるべく高く売ろうとした場合、
所有していた1~90巻に91~100巻を買い足し、
100巻セットを送料は出品者負担で20,000円で売る!
商品の状態は「やや傷や汚れあり」で出品できるように、状態の悪い3冊のみ
状態の良い中古品を別途、購入して、差替えてから出品する。
という条件が導き出されました。
今回は、フリマでの漫画販売を通じて、データに基づく意思決定のフローと、その課程で、統計的な考え方が、どのように貢献するのか、イメージできたのではないでしょうか?
データを整理、可視化して、みんなで議論できるようにするところから、明らかになった課題解決のために、何をすべきか作戦するデータ分析まで。
「かっこのデータサイエンス」は、クライアントに寄り添って、分かりやすく、取り組みを進めていきます。
ぜひお気軽に、ご相談ください。
