楽器演奏を趣味とする人にとって物件探しは骨の折れるものではないでしょうか?
物件探しサイトをみてみると楽器相談可という条件によって物件を絞り込むことができますが、木造・築何十年の明らかに遮音機能がなさそうな物件も、多数ひっかかります。
そこで、東急東横線沿線を対象に、メジャーな楽器について騒音の大きさや種類ごとにグループ分けした上で、それぞれにどのような物件条件が必要か定義し、楽器ごとにどれくらいの予算で物件探しができるのかについて調査してみました。
さらに、わたしの楽器(電子ドラム)が練習できる、予算(8万円)で住める家の選択肢についてもデータから分析してみました。
今回の結果は、楽器を弾かない人でも、この相場で家を探す際の参考にしていただけると思います。
目次
結論
東急東横線沿線の家賃相場では
- 電子楽器(エレキギターなど)をやるなら約6~8万円
- アコギや歌などなら約9~12万円
- ドラムやピアノなど防音室なら約13~15万円
電子ドラムを練習できる部屋で予算8万円では・・・
- 狙い目は「学芸大学」
- バストイレ別、室内洗濯機置、エアコン、南向きはほぼ確実に望めそう。
- 築20年以前or以後、駐輪場、バルコニー、角部屋は取捨選択が必要
使用したデータ
今回の物件に関するデータは、SUUMO関東版から取得しました。情報は2021年3月25日時点のものとなっております。
わたしが一人暮らしするための家さがしを想定しているため、固定条件は、東急東横線沿線、駅から徒歩15分圏内、1~2部屋、マンションorアパートとしました。
楽器ごとに必要な物件条件
騒音への耐性に関係するであろう条件は以下のものが考えられます。
- 建築構造(木造・鉄骨・鉄筋など)
- 部屋の位置(1階 or それ以外、角部屋)
- 防音室や地下室の有無
これらの条件において、いくつかのメジャーな楽器ごとにどの条件が必要かを対応させ、下の表のようにレベル分けをしました。
※対応表は、各楽器の調査と個人の音楽経験により主観的に設定したものであることをご了承ください。
それでは、この表で示した各騒音レベルごとに家賃を集計していきます。
騒音耐性と家賃
まずは東急東横線沿線の全ての物件について、
- 物件名
- 賃料
- 最寄駅
- 該当する騒音レベル
を取得しました。下の箱ひげ図は、各騒音レベルごとの家賃の分布を示したものです。
上の図を見てわかるように、物件が騒音に強くなるにつれて家賃の相場も高くなっていることがわかります。みなさんの想像通りだとは思いますが、騒音耐性と家賃には正の相関関係があることが実際のデータからわかりました。ちなみに騒音レベル1と2では2の方が若干相場が低くなっていますが、これは一般的に階数が高い方が家賃も高くなるからだと思われます。
上の図についてまとめると、東急東横線の沿線においては
- 電子楽器(エレキギターなど)をやるなら約6~8万円
- アコギや歌などなら約9~12万円
- ドラムやピアノなど防音室なら約13~15万円
が相場であるということがわかりました。
ドラマーのための物件探し
ここからは、自分自身に該当する物件条件についてさらに深掘りしていこうと思います。先ほど示した騒音レベルの中で、電子ドラムはレベル2(鉄骨で1階の部屋)に該当します。
東急東横線全体だと相場は約約6~8万円でした。
祐天寺〜都立大学のエリアが魅力的
しかし家賃は立地にも大きく左右されます。東横線の中でも相場には差が見られるはずですので、今度は最寄駅ごとに家賃分布を集計してみました。
上の箱ひげ図からわかるように、駅ごとにも家賃相場には違いが見られます。箱ひげ図をよく見てみると、
- 渋谷や代官山などのエリアは高級
- それに次いで複数路線が通っている乗換駅も他より高くなっている
- 東京都と神奈川県を境に(田園調布~多摩川)全体的な相場は変化している
このような特徴があることがわかります。
自分は、栄えているような乗換駅よりも静かな非乗換駅の方が好みです。後者の方が家賃も安いのでなおさらですね。ただ、都心から離れてしまうのはあまり嬉しくありません。なので、東横線の中だと祐天寺〜都立大学のエリアが理想的です。
上の箱ひげ図を見てみると、このエリアは都内にしてはワンランク相場が低いことが見て取れます。自分の予算である8万円でも十分狙えるエリアだということがわかるので、このエリアについてさらに詳しく見ていきます。
詳細をスクレイピング
さこで祐天寺〜都立大学エリアの物件に限定して詳細を見ていきます。
注目したのは、以下の項目です
- 数値or文字列で取得:賃料、最寄駅、間取り、専有面積、築年数、徒歩分数、番地
- 条件の有無を取得:バストイレ別、エアコン、駐輪場、室内洗濯機置、角部屋、バルコニー、南向き
これらの条件について、それぞれが家賃にどのように影響しているかを集計・分析しました。
番地ごとの家賃分布
まずは、最寄駅からもう一歩踏み込んだ番地ごとの家賃分布を調べました。
上の箱ひげ図を見てわかるように、番地ごとにも家賃分布が存在しています。この中で、赤い四角で囲った6つの番地については他と比べて安くなっています。
さらによく見てみると、この6つのエリアのうち4つは学芸大学駅が最寄だということがわかりました。つまり、祐天寺・学芸大学・都立大学の中でも学芸大学駅周辺の物件は特に狙い目だということです。学芸大学駅はこの3駅の中で唯一急行が止まる駅でもあるので、非常に魅力的です。
間取りと家賃
次に、間取りと家賃の関係についてみていきます。
上のような、間取りごとの家賃分布をまとめた箱ひげ図を見てみると、全体的には部屋が広くなるにつれて家賃も高くなっていることがわかります。このエリアにおいて予算8万円だと、ワンルームか1Kが現実的だということが読み取れます。
徒歩分数と家賃
続いて、最寄駅からの徒歩分数と家賃の関係について調べます。
上の図を見てみると、徒歩分数と家賃にはあまり相関関係が見られませんでした。一般的な感覚では、駅から遠い方が家賃は安くなると想像できますが、意外なことに今回のデータからは両者の関係性は観察されませんでした。
築年数と家賃
次に、築年数と家賃の関係について調べます。
上の散布図を見ると、一般的な感覚と同じく、新しい物件の方が家賃は高いという相関関係が見られました。また散布図に引いた2本の赤線からわかるように、築20年以前の家賃は様々な値を取っているものの、築20年を超えると約6~8万円に収束していることがわかります。なので予算である8万円のラインだと、築20年以降の物件の方が多いということが読み取れます。ただ、家賃8万円でも新しい物件はいくつか存在しているので、検討の余地はありそうだということもわかります。
各種設備と家賃
そして最後に、条件の有無を取得した以下の項目についてそれぞれの家賃への影響を見ていきます。(バストイレ別、エアコン、駐輪場、室内洗濯機置、角部屋、バルコニー、南向き)
まずは、バストイレ別・室内洗濯機置・南向き・エアコンについて見てみましょう。
バストイレ別と室内洗濯機置については同じような分布となりました。予算である8万円前後を見てみると、これらの設備がない8万円前後の物件はあまり存在しないということがわかります。つまり、この2つの条件については高確率で望めるだろいうということです。
南向きについては家賃の相場があまり変わらないということが読み取れます。なので、どっちでもそこまで家賃に影響しないからどうせなら希望した方がいい、ということになります。
エアコンについては、図に記載した件数比を見てわかるように、価格帯によらずエアコンがない物件はほとんどありません。なのであるものとして考えても問題ないだろうということです。
一方、駐輪場、角部屋、バルコニーについて見てみましょう。
これら3つについては似たような分布になっています。予算である8万円のラインを見てみると、設備のある物件も一応あるけどない物件の方が多い、というような傾向が読み取れます。つまりこれらの条件は、予算8万円だと取捨選択が必要だということになります。
まとめ
以上のこの記事での内容をまとめると、
- 騒音に強い物件であるほど家賃も高くなる
東急東横線沿線では
- 電子楽器(エレキギターなど)をやるなら約6~8万円
- アコギや歌などなら約9~12万円
- ドラムやピアノなど防音室なら約13~15万円
- 電子ドラムを練習できる部屋で予算8万円では・・・
- 狙い目は「学芸大学」
- バストイレ別、室内洗濯機置、エアコン、南向きはほぼ確実に望めそう。
- 築20年以前or以後、駐輪場、バルコニー、角部屋は取捨選択が必要
というようなことがわかりました。
特に個人的な物件探しの部分については、なんとなく物件サイトを眺めているだけではわからないようなことが多く見つかったと思います。
全体の傾向が把握できると、自分の予算内での物件探しの方向性が定まって、より効率的に自分の思い描く物件を探すことができます。
今回は、わたしのインターンの試用期間課題から、楽器弾きの家探しを事例に記事を書いてみました。
身近なことも、理論的・統計的な観点で観察してみると今まで気づかなかったような色々なヒント・近道が得られることがお分かりいただけたでしょうか。
データを活用して解決したい課題がありましたら、ぜひかっこのデータサイエンスまでご相談ください。
