統計

ヒストグラム 〜経営の現状を見える化する超強力なグラフ

データ解析でよく利用されるグラフの1つに、「ヒストグラム」という現状を直観的に概観することを目的とした棒グラフがあります。ヒストグラムはデータ解析における初歩的なツールであり、他の手法と比べると作成に大した労力はかかりません。

しかし。しかしですね。「ヒストグラム」はデータを整理して、現状を把握しつつ、様々な示唆を得ることのできるものとして、とってもとっても有用なグラフなのです。企業経営の下で蓄積される様々なデータを用いてヒストグラムを作れば、経営の実情・実態が可視化できます。

本記事では経営の現状を見える化する超強力なグラフである「ヒストグラム」について、例を交えながらお話しします。

経営の現状、把握できてますか?

唐突かつ、ぶしつけですが、ここでこんな質問をば。

「御社の経営の現状、把握できていますか? 例えば年間の売上の現状を把握できていますか?」

きっと多くの経営者や企業人の方は堂々と(もしかしたら財務データをチラ見しながら)こんな風に応えてくださると思います。

「ウチの会社は年間売上が12億円! 月々の推移もきちんと把握してますよ。
 1月の売上は1億円で2月の売上は1.2億。3月が0.8億円で…」。

ご回答ありがとうございます!!!!
予算の根拠の1つになる数字でもありますし、多少うろ覚えだったとしても、肝となる数値感をお答えいただけるのは当然だと思います。

では少し内容を変えて、この質問ではいかがでしょうか。明朗に答えることができるでしょうか。

“売上の構造、構成要素の現状を把握できていますか?”
例えば、昨年の売上の中で、

  • 1,000円を下回る購買はどの程度ありますか? 10,000円を上回る購買は? これらは全売上のどの程度を占めていますか?
  • 年間で1回しか購入しなかった顧客はどの程度ですか? 10回以上購入した顧客は? 年間の合計購入金額が10,000円を下回る顧客はどのくらいですか? 100,000円を超える顧客は?それらは全顧客のどの程度を占めていますか?
  • 赤字となった取引数はどの程度ありますか? 40%を超える利益率だった取引数は?それぞれ全体の利益のどれだけを占めていますか?

どんなに財務データとにらめっこしていてもこういった質問に答えることは難しいのではないでしょうか。企業内に蓄積されたデータを集め、集計、解析することではじめて把握することができるものだからです。

こういった質問に応えるべく、企業内に蓄積されたデータを集めた後に、現状のデータの構造・構成要素(上記の例でいうと売上の構造)を可視化し、把握することのできるツール。それがヒストグラムです。

経営の現状を見える化する「ヒストグラム」の作り方と見方

冒頭で触れたように、「ヒストグラム」は、ちまたでよく見かける棒グラフの一種であり、データ解析における初歩的なツールでもあるため、データさえ揃えれば作り方は大して難しくありません。

ここでは架空の受注データを元に、売上における受注単価を軸としたヒストグラムを作ってみましょう。

このデータをヒストグラムにします。

まずグラフの横軸ですが、今回は売上における受注単価を軸にするので、横軸は”受注金額”を用います。”受注金額を等分に区切った値の範囲”が横軸になります。

なお、この値の範囲の幅は「統計的にこうあるべき」という考え方がありますが、ヒストグラムを作る目的はあくまでも「経営の現状把握」です。会社の商材の金額感に即した範囲幅にするのがよいでしょう。

そして、縦軸は”データの個数”です。横軸の値の範囲内のデータ数が棒の長さになります。

ちなみに、専門用語でヒストグラムの横軸に記される、値の区切り・範囲のことを「階級」、縦軸のことを「度数(どすう)」と称します。べつに覚えることは必須ではありませんが、知っておくとデータ解析結果に対するコミュニケーションがスムーズになります。

さて話を戻して、先程の全てのデータをグラフ化すると、ヒストグラムはこのようになります。

いかがでしょうか。架空のデータではありますが、ヒストグラムによって売上における受注単価の実態が可視化され、受注単価はどのような山をなし、どこがボリュームゾーンなのか、また、どのように散らばっているのか、売上全体がどのように構成されているのかがひと目で分かります。例えばこのグラフだと、受注単価の金額帯が1,001~1,500円が一番高く、500円~2,000円までがボリュームゾーンであることや、10,000円以上購入してくれるものも少数ながら存在することが一目瞭然です。

これにて、ヒストグラムの作り方と見方がわかりました。

せっかくですので、もう1つ専門用語を覚えてしまいましょう。ヒストグラムなどのグラフにおける、データの山(ボリュームゾーン)や散らばり具合および、その形のことを「分布」と言います。
ヒストグラムを見ながら、「データがどのように分布してる?」などと言ったりするのですが、これは「ヒストグラムのボリュームゾーンはどの範囲で、どんな風にデータが散らばっていて、どんな形をしているの?」という質問とほぼ同義です。そして分布には、その形によって面白い特性があったりします。それについてはまた別記事で紹介します。

さらに補足になりますが、ヒストグラムと対をなすデータ解析のツールに「度数分布表」があります。度数分布表は、ヒストグラムを数値と表で示した別の姿であるとともに、ヒストグラムと同様に非常に協力なツールです。度数分布表については、こちらの記事を御覧ください。

「ヒストグラム」によるデータ把握からネクストアクションを模索する

ヒストグラムはデータの現状をシンプルに把握するためのツールということもあり、 その応用範囲はめちゃくちゃ広いです。
例えば、

  • 顧客別受注金額の構造を把握する
  • 顧客別受注数の全体像を確認する
  • 顧客の最新受注日を可視化する
  • 顧客別利益額の実態を把握する
  • ウェブサイトの日別訪問数・PV数を概観する
  • ある商品の日々の入庫数、出庫数の現状を可視化する

ナドナド枚挙にいとまがありません。と、いうより、『データを用いて経営の現状を把握したいときは、いつでもいかなるときでも用いるもの』の1つであり、『データを活用してネクストアクションを模索するにあたって、まずは現状を把握したい』と思ったが吉日、すぐにでも作るべきものの1つです。

そして、ヒストグラムを組み合わせたり、深堀りしたりすることで、ネクストアクションのための示唆を得ることができます。具体的には、ヒストグラムを用いて、こんな風に深堀りしながらネクストアクションの示唆を得ていきます。

これはとあるECサイトの例です。

  • 年間における顧客別利益率をヒストグラムで可視化すると、利益率0~10%に多くの顧客が集中していた。利益率がマイナスになる顧客もいた。
    この事実から、このECサイトの利益の大半は、数少ない利益率の高い顧客に支えられていることがわかった。このことを、現場と経営の主要メンバ全員が共通認識したというだけでも大きな価値であった。

  • さらに、様々な軸でいくつものヒストグラムを作ることで、利益率が0~10%の顧客と20%を上回る顧客について、”その差” がどこにあるのかを探った。
    その結果、購入している商品に関わらず、1回2,500円以上の購入を年間に4回以上しているかどうか に大きな差があることがわかった。この事実から、経営メンバーは、「まず、1回の購入金額を2,500円以上、年に4回以上購入する顧客の数を増やす」という明確な方針を打ち出した。現場メンバーはおなじ情報が共有されたことで、その目標の重要性を理解し納得した上で、さらなるデータ解析を進めながら具体的な施策の企画、実施を行っていった。また、これを機にPDCAが回り始めた。


この例はわかりやすくするために実例と比べるとだいぶ端折っていますが、このようにヒストグラムを用いて丁寧にデータを深堀りすることで、経営の現状が可視化されます。全社でそれを共有すれば、経営課題の設定から、それを解決するアクションプランまで、行動に移すことができるのです。

まとめ

今回は、

  • ヒストグラムとは、データの分布を可視化する棒グラフであること
  • ヒストグラムは、データを階級で整理して度数を可視化することで作れること
  • ヒストグラムは経営における実態把握とネクストアクションの模索に非常に有用であること

を説明してきました。

よくあるお話として、経営における現状把握やKPI設定、意思決定の際にデータの“平均値”を参考にしていた企業が、ヒストグラムによる経営実態の可視化を行った際、その結果に衝撃を受けるシーンをこれまで、数多く見てきました。

「えっ、ウチの会社、こんなに利益上げてる顧客が少ないの?」とか

「えっ、ウチの会社、ほとんど複数回購入してくれるリピーターいないじゃん、、、、」

といった具合です。

薄々気づいているけれど、見て見ぬ振りをしていた好ましくない事実(不都合な真実)が、はっきりと可視化されることは、恐ろしいことです。

しかし、ご安心ください。敵を知り己を知れば百戦あやうからず。ヒストグラムから敵を知ることはできませんが(爆)、己をよく知ることはできます。己を直視するために、データを集め、整理し、ヒストグラム等のデータ解析を用いて現状を把握しましょう。そして、そこから得られるヒントからネクストアクションを模索し、改善の一歩を踏み出しましょう。その一歩は同時に、データドリブンな経営の第一歩になるのです。

かっこ株式会社では、ヒストグラムを始めとしたデータ解析のツールや手法を用いて、売上や利益の構造を誰もが把握できる状態に可視化し、課題を解決するために重要な「条件」や「指標」を明らかにする「さきがけKPI」というサービスを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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