データ分析例

神奈川県の飲食事業者におけるアルバイト・パートの参考時給の提案

飲食店の経営者や採用担当者の皆様、アルバイト・パートの時給設定に悩んでいませんか?

神奈川県全体の平均時給は公表されていますが 、より詳細な「飲食店の平均時給」や「お店のカテゴリ」など、各々の事情を考慮した相場は分かりにくいのが現状です 。

そこで今回は、神奈川県内の飲食店の求人情報3,970件を分析し、以下の4つの観点から、飲食点のアルバイト・パートの参考時給を提案します 。

今回は以下の4つの観点から特徴的な参考時給を分析しました。

  • 神奈川県の飲食店における時給の全体の傾向
  • 飲食店がある市町村別の時給の違い(例:同じ神奈川でも横浜市は時給が高い?)
  • 飲食店のカテゴリによる時給の違い(例:ラーメン屋と寿司屋で時給は異なる?)
  • チェーン店と非チェーン店で違いはあるのか?(例:個人経営店は知名度などの理由から、人を集めるには高めの時給を設定するべき?)

※神奈川県は2025年10月に最低賃金が改正されましたが、本分析は2025年10月以前の掲載求人のデータを用いて分析をしています。

この記事を参考に、ぜひ飲食点のアルバイト・パートの時給を考えてみてください。

結論. 神奈川県の飲食点のアルバイト・パートの時給は「1200円」が5割

  • 神奈川県の飲食店求人の時給は、最低賃金である1162円もしくはキリの良い1200円に設定されているケースが全体の約5割を占めている。
  • 川崎市で募集をかける場合、時給は1200円以上が相場である。
  • 弁当屋やラーメン屋といったカテゴリでは、1200円以上で募集するのが相場である。
  • 知名度の低い非チェーン店は時給を高くすべきか?」という点については、必ずしも高く設定する必要はない

この分析は2025年8月に実施しているため、現在の最低賃金とはズレがある可能性があります。

以降では、分析の概要とこのような結論に至るまでの過程について説明していきます。

神奈川県のアルバイト・パート時給を算出した分析方法

神奈川の飲食事業者がアルバイトに支払う時給の分析は、以下の流れで実施しました。

  • Webサイトからのクローリング・スクレイピングを行う。
  • 取得したデータに前処理を施す。
  • 加工したデータを使用して箱ひげ図と表を作成する。
  • 中央値や平均値に加え、箱ひげ図の特徴を考慮した参考時給を提案する。

分析にはPythonを活用しています。

クローリングやスクレイピングなどを行いたい場合はPythonを学んでみましょう。

分析に使用したデータ

今回の分析では、求人情報サイト「バイトル」さんに掲載されている神奈川県内の飲食業の求人情報を使用しました。データ収集日は2025年8月4日に実施しました。

取得データ数の合計は3,970件で、取得項目は「時給」「勤務地」「店舗名」「求人のカテゴリ」です。

求人情報から取得した市町村は以下の通りです。

  • 市町村
  • 川崎市
  • 逗子市
  • 横浜市
  • 愛甲郡愛川町
  • 厚木市
  • 鎌倉市
  • 座間市
  • 大和市
  • 相模原市
  • 横須賀市
  • 茅ヶ崎市
  • 平塚市
  • 伊勢原市
  • 海老名市
  • 秦野市
  • 小田原市
  • 綾瀬市
  • 三浦市
  • 藤沢市
  • 中郡大磯町
  • 高座郡寒川町
  • 足柄下郡湯河原町
  • 足柄上郡開成町

次にレストランのカテゴリは以下のようになっています。

  • 弁当屋
  • カレー
  • ラーメン屋
  • 焼肉屋
  • お好み焼き・たこ焼き屋
  • レストラン
  • 中華
  • うどん・蕎麦屋
  • 寿司屋・回転寿司
  • スイーツ
  • パン屋
  • イタリアン
  • ピザ屋
  • 和食
  • ファミレス
  • ビュッフェ・食べ放題・バイキング

また、求人データは同じ会社が2つ以上の求人を掲載している可能性があります。今回はそれぞれを別の求人として分析をしています。

バイトルの求人ページでは、チェーン店かどうかを条件として検索することができないため、分析にあたってチェーン店のみを抽出する処理が必要でした。

そこで今回の分析では、店舗名に「〇〇店」という名称が含まれていない求人を「非チェーン店」として扱いました。

その後目視での確認を行い、チェーン店である項目は除外しました。

実際の分析の流れ

分析は以下の観点ごとに行います。

  • 神奈川県全体の時給の分布や平均値、中央値などの全体の傾向を把握する。
  • 市町村によって時給に差があるのかを分析する。
  • レストランのカテゴリの違い: ラーメン屋とイタリアンなど、業態による時給の違いを比較する。
  • 非チェーン店のみの時給: チェーン店と非チェーン店で時給傾向に違いがあるのかを検証する。

大項目から小項目へ調査項目を変更させていきます。

このような順番で分析していくことで分析漏れを防ぎます。

市町村やレストランのカテゴリによって時給設定は変えることはおすすめ

ここからはデータ分析をした結果を示していきます。

市町村やレストランのカテゴリごとにおもしろい傾向も見られたので、1つ1つ解説していきます。

神奈川県全体の飲食店のアルバイト・パート時給傾向

まず、神奈川県全体の飲食店の求人3,970件のデータを見ていきましょう。神奈川県全体の平均時給は1220円、中央値は1200円でした。

最も特徴的なのは、多くの企業が最低賃金である1162円(972件)、もしくはキリの良い1200円(927件)を時給として設定しており、この2つの時給が提示されている求人だけで全体の47.8%を占めている点です。

一方で、これら以上の時給をもらえる場所は高時給バイトと言えるでしょう。実際、1250円や1300円はそれぞれ300件以上求人があり、割合でいうと16.7%です。

また、求人のなかで50円区切りの提示時給が多いと言えそうです。

上のグラフは「箱ひげ図」といい、データのばらつきを視覚的に理解するのに役立ちます。この後の分析でもこの図は頻繁に使うので、この図の見方を簡単に解説します。

  • 箱(四角い部分): 全データの真ん中50%がこの範囲に収まっていることを示します。
  • 箱の中の線: データを順番に並べたときの真ん中の値、つまり中央値です。
  • 上下の線(ひげ): 箱に含まれない上下25%ずつのデータが、どの範囲まで広がっているかを示します。
    • 今回の場合、求人時給は、最低賃金が設定されているため、下に伸びる髭は短いのが特徴です(1162円までしか髭が伸びていない)。
  • 点(外れ値): 他のデータから大きく外れた値です。

(箱ひげ図について詳しく知りたい方は、『箱ひげ図について超カンタンに解説してみた』の記事を読んでください。)

今回の時給データに当てはめてみると、真ん中の50%の求人がおおよそ1170円〜1250円の間に集中していることがわかります。

そして、箱の中の線が示す中央値は1200円です。

時給別の掲載求人数も1200円が一番多かったことから、分析時点での時給相場と言えるでしょう。

一方で、箱から上に伸びる「ひげ」や赤い「点」は、中には1350円や1400円といった、相場よりかなり高い外れ値な時給の求人も少数ながら存在することを示しています。

神奈川県の市町村別の傾向

以下は神奈川県の市町村別ごとの中央値時給の一覧です。

データ数が少なく20件に満たない市町村は、求人情報の変化によって値が大きく変わる可能性があるため、参考程度にしてください。

市区町村 参考時給(中央値) 備考
川崎市 1,220円
逗子市 1,200円 データ数が少ないため参考(13件)
横浜市 1,200円
愛甲郡愛川町 1,180円 データ数が少ないため参考(8件)
厚木市 1,200円
鎌倉市 1,200円
座間市 1,190円
大和市 1,190円
相模原市 1,200円
横須賀市 1,190円
茅ヶ崎市 1,180円
平塚市 1,190円
伊勢原市 1,200円
海老名市 1,190円
秦野市 1,180円
小田原市 1,200円
綾瀬市 1,162円 データ数が少ないため参考(15件)
三浦市 1,190円
藤沢市 1,162円
中郡大磯町 1,190円
高座郡寒川町 1,162円
足柄下郡湯河原町 1,162円
足柄上郡開成町 1,162円

上のグラフを見ると、神奈川県の市町村によって箱の位置や大きさに違いがあることがわかります。

次に神奈川県の市町村別の箱ひげ図を見てみましょう。

箱ひげ図の上についている数字は該当するデータ数になります。

勤務地ごとの時給を分析したところ、政令指定都市である川崎市横浜市、観光地がある鎌倉市の求人は中央値が1200円以上の求人が多かったです。

一方で山間部では求人自体が少ない市町村も多いものの、概ね最低賃金付近のデータが多くあることが分かるかと思います。

ここでの分析で私が着目したのは時給の高い川崎市時給の低い藤沢市の時給です。

最も時給水準が高かった川崎市

「神奈川で最も時給の高い市町村はどこですか?」と聞かれたとしたらなんと答えましたか?

横浜市と答えた人が多かったのではないでしょうか?私も分析前までは、横浜市が一番経済が発展していて時給も高いだろうと予想していました。しかし、最も高い時給は横浜市ではなく川崎市だったのです。

特に興味深い点として川崎市の求人の全体の傾向として1200円以上であるということです。箱ひげ図の一番右の川崎の箱ひげをみてください。

箱の下が1200円となっています!これは全求人の75%が1200円以上であることを示していて、他の市町村の箱ひげ図と比較してもここまで全体的に高い傾向がある都市は川崎市だけと言えるでしょう。

低い時給水準だった藤沢市

次に面白かった点は藤沢市です。神奈川県に住んでない方には想像しにくいかもしれませんが、藤沢市は神奈川の中で4番目に人口が多い市町村であり、これは筆者の主観でありますが、電車も3路線が利用でき、江ノ島などの観光資源も豊富で栄えている都市といえます。※(神奈川県 :市区町村及び地域別の人口より)

しかし、左から5番目の黄色の箱ひげをみてみると、箱の上側が1200円と接しています。

これは川崎市とは対照的に全求人の75%の時給が1200円以下であることが示されています。

レストランのカテゴリ別の傾向

飲食店のアルバイトを探す際、働くエリアだけでなく「どのようなお店で働くか」も重要なポイントになります。

実は、レストランのカテゴリによって時給の相場にはっきりとした違いが見られます。

カテゴリ 参考時給(中央値) (条件付)参考基準時給
弁当屋 1,297円
カレー 1,300円 データ数が少ないため参考(15件)
ラーメン屋 1,250円
焼肉屋 1,200円
お好み焼き・たこ焼き屋 1,255円 データ数が少ないため参考(6件)
レストラン 1,200円
中華 1,200円
うどん・蕎麦屋 1,200円
寿司屋・回転寿司 1,200円
スイーツ 1,170円
パン屋 1,170円
イタリアン 1,200円
ピザ屋 1,200円
和食 1,166円
ファミレス 1,162円
ビュッフェ・食べ放題・バイキング 1,162円

これまでの分析と同様に箱ひげ図をみてみましょう。

分析の結果、たこ焼き屋とカレー屋のデータ数が少ないことに留意が必要ですが、弁当屋やラーメン屋といったカテゴリでは時給が1200円以上で設定されている求人が多いことが分かりました。

一方で、ビュッフェ・食べ放題、ファミリーレストラン、和食、パン屋といったカテゴリでは、時給1200円を下回る求人が多く見られる傾向にありました。

分析ではっきりとしたのが、レストランのカテゴリごとに異なる提示時給の中央値の差です。ひだりから4番目までの箱ひげ図をみてください。

もちろん箱ひげ自体が下にあるのですが、真ん中に引かれる太い横線、すなわち中央値が箱の下側と同じところにあります。

これはデータの下から25%までの値も50%までの値も最低賃金であるということです。

これは、図内の左側にある箱ひげ図では最低賃金が提示される傾向がとても強いことが示唆されていると言えるのではないでしょうか?

チェーン店と非チェーン店の比較

「個人経営のお店(非チェーン店)は、知名度が低い分、時給を高くしないと人が集まらないのでは?」という仮説のもと、チェーンと非チェーンのお店を分けて分析しました。

まず平均時給を見てみると

  • チェーン店 : 平均時給 1211円
  • 非チェーン店 : 平均時給 1244円

仮説通り非チェーン店の方がチェーン店よりも33円高い結果となりました 。しかし、時給の中央値を見てみると

  • チェーン店 : 中央時給 1200円
  • 非チェーン店 : 中央時給 1200円

両者とも1200円で全く同じでした。

これは、一部の高時給な求人が非チェーン店全体の平均値を引き上げている可能性を示唆しています。

箱ひげ図をみてもデータの分布に大きな違いはない、というのが実態のようです。

では、両者の違いはどこに表れているのでしょうか。最も顕著だったのは、最低賃金(1162円)で募集している求人の数です。

 

「チェーン店では、最も多く提示されていた時給が「1162円」で869件ありました。

つまり、かなりの数の求人が最低賃金で募集されていることがわかります。

一方で、非チェーン店の求人では、最低賃金での募集はわずか14件にとどまっていました。

また、非チェーン店で最も多く提示されていた時給は1200円でした。

 

結論として、箱ひげ図の形状と中央値が一致していることから、「非チェーン店だからといって、必ずしも時給を高く設定する必要はない」と言えるでしょう。

ただし、大手チェーンのように最低賃金(1162円)で募集をかけると、応募が集まりにくい可能性も否めません。

そのため、非チェーン店の中央値である1200円が一つの基準となりそうです。

まとめ

以上の分析をまとめるとこのようになります。

  • 神奈川県の飲食店求人の時給は、最低賃金である1162円、もしくはキリの良い1200円に設定されているケースが全体の約5割を占めており、1つの目安になります。
  • 川崎市で募集をかける場合、時給は1200円以上が相場と言えそうです。
  • 弁当屋やラーメン屋といったカテゴリでは、1200円以上で募集するのが相場と言えそうです 。
  • 「知名度の低い非チェーン店は時給を高くすべきか?」という点については、必ずしも高く設定する必要はないという結果に本分析ではなりました。

いかがでしたでしょうか?

今回の分析を通じて、予想通りなところも予想外なところもあったのではないでしょうか?

特に、横浜市より川崎市の方が時給が高い傾向があるのは驚きでした。

筆者個人として、データの分析を通じた知見の魅力は、直感や勘によるバイアスを浮き上がらせる点だと思います。

横浜市より川崎市の方が時給が高い傾向があるというのは、まさにこの点の具体例と言えるのではないでしょうか。

もし、神奈川県でバイトの時給を決めあぐねているなら、この記事を参考にして実際に分析をし、客観的な指標から時給を決めてみてはいかがでしょうか?

私たちはあなたの悩みをデータの力で解決します!

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