機械学習・AIは、近年、ビジネス側からの期待が非常に大きな、熱い分野になっています。
しかし、数年前「人間の仕事がAIに全部取って替えられる」くらいの勢いで、期待が煽られていたこの技術も、正しく技術を理解しないと成果があげられないことが、広く知られるようになってきました。
この記事では、ビジネスに関わる皆さんが成果をあげるために、AIにできることと、出来ないことを可能な限り読みやすくまとめ、注目すべき成功例や、失敗例をあげつつ、考えていきたいと思います。
目次
AIは毎日繰り返される、小さな判断や意思決定を自動化できる
機械学習は、ひとことで言うと、
データを「学習」して「予測」あるいは「分類」することを得意としています。
その高い予測精度をもって、意思決定を自動化できることが、機械学習の技術に期待されていることで、それを実現できるシステムがAI(人工知能)と呼ばれているものです。
例えば、文章や、画像、動画などの何らかのデータを見て、人間が行っている意思決定は、AIに任せられる可能性があります。それでは、どういう場面にAIを使っていけば大きな成果が期待できるのでしょうか。
まずAIへの投資に見合った効果が期待できるかは、その意思決定にまつわる業務頻度がどれだけ高いかに左右されます。年に何度かの重要な意思決定ではなく、毎日、現場で繰り返されているような小さな判断や意思決定に、AIは適しています。
判断の業務量が多ければ多いほど、大量のデータが集まります。
集まったデータを使ってどんどん「学習」することで、より高い精度が追求出来ます。
量が多く手間もかかっている仕事を自動化できれば、目に見えて、生産性があがり、大きな成果が期待できるというわけです。
AIが成果をあげられることと、課題点
- 去年までの購買履歴と、今年の購買履歴から、 これからその商品がどれくらい売れるか予測する
- MRI画像から、がんがあるかどうかを判別する
- 過去の取引情報を学習してEC取引のうち、代金が回収できなさそうな取引を検知する
みたいなものが、考えられます。
一方、AIを上手く使っていくうえでの課題としては、次の3点が重要です。
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大量のデータが必要
とにかく、「学習」するために大量のデータが必要です。
ひとつのデータを数十万件持っていることよりも、判断に使えるデータの種類がたくさんあって、それぞれ大量にデータを持っていることが求められます。
自然に発生したデータであることが望ましく、誰かの判断による作為が作用したデータが含まれていると、作為も含めて「学習」してしまうリスクがあるのも難しいところです。 -
論理的な説明は出来ない
例えば、機械学習モデルが「この商品は来月1000個売れる」と予測したとしても、その理由や根拠を説明として求められるような判断は苦手。
極端な話、画像から「猫」と「犬」を判別する、みたいに根拠や論理を必要としない、作業的な判断ほど得意な技術です。
判断結果をアクションに移す際に、人間が納得出来る論理的な説明や、根拠が必要なら「統計学」を使った問題解決をお薦めします。 -
ビジネス理解と経営判断が成功の鍵
AIを導入することで、成果をあげるためには、機械学習の技術者に、目的に対する深いビジネス理解が求められます。やってみないと成果が分からないこの分野への投資は、思い切った経営判断のもとで、業務の見直しをする覚悟も必要です。
「価値を生むAI」を作るのは、簡単ではありません。
結果が絶対に正しくなければ許されない、重要な意思決定ではなく、「初心者よりはいい」くらいの精度で許される業務から、小さくAIの活用を始めていくことを、私は、お薦めします。
注目のAIを使った成功例
インフラ構造物のひび割れ診断サービス「ひびみっけ」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1901/31/news034.html
構造物のひびがあるかどうかを画像から検出して、点検を自動化した事例。
AIタクシー
https://sorabatake.jp/6015/
タクシーの需給予測をして、需要が多い箇所にタクシー運転手を向かわせる試み。
来店客数の予測システムで、食品ロスを削減
https://change.asahi.com/articles/0018/
需要予測を行い食品のロスを減らすことに成功した、老舗食堂の事例。
勉強になるAIの失敗例
Amazonが、採用プロジェクトでのAI活用を打ち切りに
https://jp.reuters.com/article/amazon-jobs-ai-analysis-idJPKCN1ML0DN
AIで書類選考していたところ、今までの採用者に男性が多かったせいで、女性が女性であるだけで減点されてしまう不平等が発生。AI採用のプロジェクトが打ち切られた例。
人間の作為の結果生まれた、偏りのあるデータを学習してしまうと、正しい結果を出せなくなってしまいます。
重要度の高い意思決定をAIにゆだねることの難しさが窺える、失敗事例です。
結論
・AIは毎日繰り返される、小さな判断や意思決定を自動化できる。
・AIは目的が明確で、判断するために使える大量のデータが存在し、多少間違っても許される程度の意思決定を、自動化するのに向いている。
・AIは、結果について、なぜそうなったのかを論理的に説明できない。
どんな技術にも、向き、不向きがあります。
かっこでは、目的や課題と、お持ちのデータがどんなものかをヒアリングして、成果をあげるうえで最良の手法を、ご提案します。
まずは、ぜひ、かっこのデータサイエンスまでご相談ください。