かっこのデータサイエンスを活用し、
「顧客起点」という企業理念に沿った施策を展開
導入サービス:データサイエンス
── まずはご経歴からお聞きしたいのですが、齊藤様はアルバイトからアーバンリサーチに入社されたと伺いました。
齊藤 「学生時代に販売のアルバイトとして始めて、そのまま入社しました。当時『アーバンリサーチ』ブランドとしては大阪に1店舗しかなかったんですよ。売上も10億円程度だったかな。ちょうど企業が『ホームページ』を作りだした頃で、販売と並行して制作業務も担当していました。専門の業者さんにお願いするまで10年近く、プラニングから商品動画の撮影、コーディングまで中心に立って進めていました。
その後東京に転勤になったところで広報にも携わるようになり、メディアへの商品貸出から企業としてのPRまで、属人的に行われていた業務を改めて組織として立ち上げていきました。
そうした経緯もあり、今ではプレス対応・企業広報からリアル・ネットを含めたマーケティング、顧客管理など6つの部門にまたがって担当しています」
── ひとつの仕事でも大変なところを6部門ですか!
齊藤 「弊社の場合は、やりたいと言った人間がその仕事に関われる環境があります。この役職だからこの仕事、と固定されていないんですね。もちろん予算などの制約があるので効果的・効率的な施策を考え抜かなくてはなりませんが、それもまた仕事として面白いところだと思います。
今もこの伝統は続いていて、経営会議でも社長が『この件わかる人いるか?これからどうする?』なんて聞いてきたりして。答えると『じゃぁそれやって』みたいな」
── そうした社風もあってアーバンリサーチ様は、業界でも新しい施策をタイミングよく打ち出している印象がありますが、弊社を知って頂いた頃にはどのような課題があったのでしょうか。
齊藤 「離脱率の改善や、会員をいかにアクティブにするかといったところです。キャンペーンで1度は買ってくれたけど、次につながりにくいとか……。
手を打つにも、たとえばカスタマイズして情報を送ることを考えたとします。100人なら100通りに分ければ済みますが、60万人以上の会員に対してどうクラスタリングしてどう伝えるのがよいか、わからないわけです。
当時は購入金額で会員をランク付けしていましたが、これはあくまで売る側の視点での分け方に過ぎませんから」
齊藤 「これまで、リアルの店舗を中心にお客さんを呼んできて売上を作ってきて、ノウハウもあり実績も上がっていました。時期的に商業施設が多く作られ、そこに低コストで出店できたなどの外的要因も重なり、成長が続いていたのです。
ですが、そのお客様に繰り返し使っていただくための接し方は未知の世界でした。
さらに場所が関係ないインターネットの世界でも知名度を上げていかないと、リアル店舗も厳しくなっていくだろうという思いがありました。
幸い会員データはありますから、活かし方を考えることが次の仕事だなと思っていたところで、出会ったのが成田さんでした」
成田 「斎藤さんの講演を聞きに行って、その後初めて商談してからもう2年近くですか。覚えてます?」
齊藤 「よく覚えてますよ。とにかく声が大きくて(笑)、でも仕事に対する熱さがありつつ、理論の組み立てに筋が通っていてとてもわかりやすかった。私も接客から始めているので、物事をわかりやすく伝えることの難しさは知っています。
だから成田さんとは一緒に仕事したいなと。仮説を一緒に考えて作り上げられる人を探していたので、まさに最適でした。
あと、無理を聞いてくれそうとも思いましたし、仕事以外でも会いたいなと(笑)」
成田 「最初はお客さんのクラスタリングから始めましたよね。個人情報を除いた顧客情報と、リアル店舗とEC全てを対象としたあらゆる購買データをもとに、属性やブランド、購入頻度や値引き率など、『買い方』別にみていくと、非常にユニークな結果となりました」
齊藤 「御社のクラスタリングによって、それまでの指標だった年間購入金額別ランクの話は減りましたね。購入金額は売る側にはわかりやすいのですが、購入へのポテンシャルは測れていなかったと思い知りました。
確かに年間50万円購入していても、10万円のスーツを定価で5着買うのか、半額セールの商品を積み上げて50万円になったのか。全く違う顧客像ですよね。
あとは、各ブランドの年齢層や値引きの効果など、想定していたこととの乖離にも驚きました。やはり作り手側では、ブランドへの想いとかターゲット像が前提になるので、邪念(笑)なく見られないんだなと」
成田 「私は、『アーバンリサーチ』は本当にお客さんに愛されている会社だと感じました。商品の質がいいから購入している、ずっとそのブランドを愛用しているという層が厚く、同じ商品を買い足すなどの行動も多く見られました」
成田 「もうひとつ御社に対して驚いたのが、毎月の定例会議でこうした結果や施策案を伝えると、次月には売上などの数値がググッと伸びていることです。
結果を基にどういった手を打ったか弊社ではわからないだけに、アクションのスピード感や実行力にどんな秘密があるのかとても興味があります」
齊藤 「御社にはお客さんのデータから、各クラスタのキャラクターや購入ポテンシャルを明らかにしてもらっていると思っています。主語が人、といえばわかりやすいでしょうか。
一方、弊社がこれまで見ていたのは商品なんです。商品にもひとつひとつキャラクターがあって、作る側としてそこは把握しています。いつ・どれだけ売れるのか、値段を下げるタイミングとか。
商品を縦軸に、お客さんのキャラクターを横軸に置き、メッシュとして見ていくことで類似性など浮き彫りになる情報があり、ご提案頂いた勝ちパターンへのアクションもより効率的に行えるということだと思います」
成田 「施策実施後に軌道修正するケースも当然あって、始めるときより格段に難しいと思いますが、その速さもずば抜けていますよね。
全国展開している流通業において、販売担当者の隅々までどうやって意思統一を図っているんですか」
齊藤 「自主性と共にトップダウンで伝えるところも、組織としてできているのかなと思います。あとは関西気質もあるのかな。きちんと費用を払って調べていただいた情報に対して実行しなくてはもったいない、支払った以上は自分たちのアクションまでしっかりやろうという意識が。
もちろん、実際に成果が出ているから信頼している面も大きいです。御社のサービスにこれだけ費用が掛かっているけど、年間の売上や利益にもたらすインパクトはこれくらい、と数字で出せば、ショップのスーバーバイザーなども十分納得して対応してくれますよ」
成田 「これまでの活動を評価していただき、弊社を『赤坂見附にはアーバンリサーチのデータサイエンス分室がある』と言っていただいたことがありましたよね。あれは本当に嬉しかった。これからも、御社の施策の打率向上に貢献していきたいですね!」
齊藤 「ぜひお願いします。今、AIばやりですけど、あと5年くらいは本当のAIは出てこないのかなと考えています。人間が考えていることを肩代わりするというよりは、考えるための材料をきちんと提供して、人間が選択することを手助けしてもらう方がありがたい気がしていて。
その点で御社は、解析結果から誰もがわかる『アクションへの判断材料』を見せてくれるので、非常に適切だと感じています」
成田 「あとは、AIを活用すると過程がブラックボックスになりますよね。多くのオペレーション業務がある流通業などでは、施策の妥当性をきちんと説明できる統計学的なアプローチの方が、説得力を持って受け入れられる面もありそうです。
ビッグデータやAIという流行り言葉もいいのですが、適切な手法を用いて提案していくスタンスはこれからも続けていきます!」
── 二人の会話から、アーバンリサーチ様でのデータ活用の有効性が伝わってきますが、最後に、弊社との取組の前後で変わったことと、もっと弊社に取り組んでほしいことをお尋ねしました。
齊藤 「社内で最も変わったのは、仮説を考える習慣がついたことですね。自分の経験からだけでなく、統計データに基づいた形で。より強い根拠のある仮説ですから、戦略・戦術が立てやすい。結果もデータの変化で明らかになりますから、打ち手ひとつひとつを検証でき、より効率的な対応につながっています。
御社にはお願いした以上のものを出してもらっていると思っていて、本来は弊社の視点からも欲しい情報を依頼したいのですが、それはこちらの課題ですね。
もう少し長い目で見ると、今後様々な業務を自動化していく流れになると思いますが、判断に必要な材料やそのための学習材料をまとめていただき、その流れを加速してもらえたら嬉しいです。
初めて成田さんとお会いした時から、ゴールを共有できているという想いで取り組んできましたので、これからもその道をともに進んでいければと思います」
統計学的なアプローチで顧客クラスタリングを行い、現状を新たな視点でシンプルに把握して売上向上への施策を着々と実行しているアーバンリサーチ様。
弊社との施策以外にも、自社ブランドを幅広く扱う大規模店を都内に展開するなど、新たなアクションが話題を呼んでいます。
これからのさらなる成長に向けて、弊社も「赤坂見附データサイエンス分室」として貢献してまいります。
2017年11月6日取材 ※文中発言欄の敬称略。内容は取材時のものです。
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