様々な業界で耳にするようになったD2C。
アパレル業界にけん引される形で、他の業界にもD2Cの波が波及しています。
ただ、最新のD2Cトレンドについて、網羅的に整理された情報は少ないのが現状です。
そして、今どういう方向に向かっているのかいまいちわからない方もいらっしゃると思います。
そのため今回は以下について整理しました。
- D2C事業がトレンドとなっている業界3つ
- アパレル・美容・食品業界でD2C事業がトレンドな3つの理由
- D2C事業に関する5つのトレンド
D2C事業に関するトレンドを押さえておくだけで、様々なビジネスチャンスが眠っていることに気づけるはずです。
これからD2Cに挑戦してみたい方、運営している事業をD2C化して成長を加速させたい方はぜひご一読ください。
〜ネット通販(EC)やD2C事業に付きまとう不正注文が起こる原因や対策を解説〜
Contents
D2Cとは?
D2C(D to C)とは「Direct to Consumer」の略です。
具体的には、製造企業が自社で企画・生産した商品を、卸売り業者や小売店をはさむことなく、消費者へ直接販売する取引形態のことを指します。
D2Cの特徴は以下の2点です。
- 顧客データを蓄積・活用できる
- 高い収益性を期待できる
第一に、顧客データを蓄積・活用できることについて。
D2Cであれば、これまで販売担当の小売店が握っていた「どんな人が・何を・いつ」買ったのかという販売データを製造者自身で取得できるようになります。
そのため、「どんな商品がどれだけ売れるのか?」を可視化して商品開発に活かせるようになります。
第二に、高い収益性を期待できることについて。
こちらは卸売業者や小売店に支払っていた中間マージンがなくなるため、利益率が改善されることを意味しています。
D2Cについてさらに詳しくは「流行りのD2Cとは?メリット・デメリットと事例をわかりやすく解説!」をご覧ください。
D2C事業がトレンドとなっている業界3つ
D2C事業がトレンドになっている業界は以下の3つです。
- アパレル業界
- 美容業界
- 食品業界
D2C事業が流行っている業界を押さえると様々なチャンスに気づけるはずなので、各業界でどんなことが起きているか紹介します。
D2C事業がトレンドの業界1:アパレル業界
D2Cと聞いて真っ先にイメージするのがアパレル業界ではないでしょうか。
アパレル業界ではスタートアップから老舗企業までD2Cに取り組んでいます。
例えば、スタートアップでは小柄な女性向けのアパレルブランドのCOHINAが代表事例として挙げられます。
COHINAは、身長が低い女性スタッフを着用モデルに起用し、インスタライブで商品を紹介して、ブランドの世界観を消費者に直接伝えるD2Cブランドです。
また、老舗企業ではランドセルや大人向け鞄などの革製品を製造する土屋鞄製造所が、Shopifyは使ってECサイトを立ち上げています。
スタートアップだけでなく、老舗企業もD2C化していることから、アパレル業界全体でD2Cがトレンドといえます。
D2C事業がトレンドの業界2:美容業界
美容業界もD2Cをけん引している業界の1つ。
それは大手企業の買収劇からも読み取れます。
例えば2016年には、ユニリーバ社がシェービングとカミソリを毎月届けるサブスクリプションモデルでビジネスを展開するDollar Shave Club社を約1,100億円で買収しています。
また、2019年には資生堂が人体にも環境にも優しいスキンケアブランドのドランクエレファント社を約900億円で買収もありました。
大手企業もD2Cブランドへの投資をどんどん進めていることからもわかるように、美容業界でもD2Cがトレンドとなっています。
D2C事業がトレンドの業界3:食品業界
意外かもしれませんが、食品業界でもD2Cがトレンド化しています。
例えば、“人生最高のチーズケーキ”と称されるMr.CHEESECAKEをご存じでしょうか。
Mr. CHEESECAKEはミシュラン星付きレストランの料理長が、販売を開始したネット通販専門のチーズケーキブランドです。
毎週数量限定でネット販売しており、開始5分で完売という人気ぶりで注目を集めています。
このように、食品業界でもD2Cスタートアップが登場し、1つのトレンドを作っているのです。
アパレル・美容・食品業界でD2C事業がトレンドな3つの理由
これらの業界でD2C事業がトレンドになっている理由を解説します。
消費者と直接繋がれるツールが登場したため
D2Cがトレンドとなっている1つの理由は消費者と直接繋がれるツールが登場したためです。
テクノロジーの発展により、Shopifyに代表されるような、ネットショップの構築サービスが生まれました。
これらのツールを用いればプログラミングの知識がなくても本格的なECサイトの開設が可能。
そのため、誰でもD2Cビジネスをすぐに始めることができるようになりました。
誰でも直接消費者と繋がれるので、D2Cビジネスに乗り出す人が増加し、トレンドになったといえます。
消費者のニーズにきめ細やかに応えていく必要があるため
次に消費者のニーズにきめ細やかに応えていく必要があることが理由として挙げられます。
近年、ミレニアム世代やZ世代を中心に「SDGs(持続可能な開発目標)」に対する共感が広がったりと、消費者の価値観が多様化しています。
このような状況では、マス向けの商品を開発しても消費者それぞれのニーズにうまくマッチせず、顧客を競合に奪われてしまいます。
つまり、売上を伸ばしていくには、消費者が普段どんなことを考え、何を求めているのか理解し、きめ細やかに応えていく必要があるのです。
そうした流れを受けて、各業界でD2C化が起きています。
商品そのものではなく”ブランドストーリー”がより重要になったため
モノそのものではなく、その背景の”ブランドストーリー”がより重要になったのも1つの理由です。
例えば、自動車ブランドのNISSANは「やっちゃえNISSAN」という「自分の信じる道に勇気をもって踏み出そう」というマインドが、ブランドの存在意義として共有されています。
正直なところ、ここまで自動車産業が発展している日本では、TOYOTA、HONDAで車を買っても機能はさほど変わりません。
しかし、「やっちゃえNISSAN」の考え方に共感し、「自分も信じた道を進んでみたい」という想いでNISSANを選んでいる方がいるのです。
最近のトレンドでは、商品が持つストーリーを伝えることが売上に直結するようになりました。
そのため、D2C化して代理店や卸を通さず消費者と直接繋がって、自社のストーリーを伝えきる戦略がトレンドなのです。
D2C事業に関する5つのトレンド
D2C事業に関する5つのトレンドは以下のとおりです。
- Amazonなどのプラットフォーマーからの撤退
- 老舗企業による新規D2C事業の立ち上げ
- リアル店舗を持たない小売企業の台頭
- 個人にパーソナライズされた顧客体験の提供
- マイクロブランドが商品を直接消費者に対して販売
D2C事業のトレンドを押さえることで、今どんなところにチャンスがあるのかに気づけるはずです。
これから1つずつ解説します。
Amazonなどのプラットフォーマーからの撤退
大手企業のAmazon離れが加速しているのはトレンドの1つです。
例えば、大手スポーツブランドのNIKEは2019年11月13日、Amazonから撤退しました。
その理由は、Amazonの売上に依存せず、消費者とより直接的で緊密な関係を築くことでD2C企業として成長していくためです。
Amazonでは全ショップが同じ販売画面になっており、他のショップと差別化してブランドの世界観を表現するのは困難。
一方、Shopifyなどを用いて独自のECサイトを構築すればブランドストーリーを効果的に伝達できます。
ストーリーが価値になる時代だからこそ、Amazonを離れることがトレンドになっているのです。
老舗企業による新規D2C事業の立ち上げ
老舗企業による新規D2C事業の立ち上げもトレンドの1つ。
例えば、創業200年を超える老舗食品メーカーのミツカンは、D2C食品ブランドのZENB(ゼンブ)を立ち上げました。
ZENBは、野菜の皮や芯も含めて丸ごと使ったスティックタイプとペーストタイプの加工食品です。
ミツカンは食酢などの調味料が有名なため、調味料と異なる全く新しいジャンルの商品という難しさからD2Cブランドとして立ち上げました。
D2Cとして顧客と直接接点を持つことで、ZENBをパンに塗って食べるという想定していた食べ方と異なる顧客が一定数いることが判明。
「パンに塗って食べよう」という訴求文言に広告を切り替えることで売り上げが増加したそうです。
老舗企業が生き残りのためにD2Cに参入するのがトレンドになっています。
リアル店舗を持たない小売企業の台頭
リアル店舗を持たない小売企業が台頭しているのもD2Cのトレンドです。
例えば、は2012年に創業されたオンラインでビジネスウェアを購入できるブランドのFABRIC TOKYOは創業当初は実店舗を持ちませんでした。
もとはオンライン完結型で、ミリ単位の寸法が重要なオーダーメイドスーツを作って販売していました。
一昔前までは「ネットショップで服を買ってもサイズが合わないのでは」という悩みを抱える人が多かった日本。
しかし、コロナ禍によってECサイトでの買い物が増加して、ネット通販に抱いていた不安が少しずつ薄れています。
このような状況に後押しされ、今では大小様々なブランドがオンライン完結型でD2Cに乗り出し商品を販売しているのです。
個人にパーソナライズされた顧客体験の提供
D2Cでは個人にパーソナライズされた顧客体験を提供することもトレンドに。
例えば、2017年に創業されたFUJIMIは肌診断をもとに個々人の肌に合ったカスタマイズサプリを販売しています。
WEB上で肌診断を行うことで、その人に必要な栄養素が調剤されたサプリメントが定期的に届く仕組みになっています。
このように、個々人でも気づかないようなニーズを捉え、パーソナライズされた体験を提供するD2C事業が増加しています。
マイクロブランドが商品を直接消費者に対して販売
マイクロブランドが商品を直接消費者に対して販売しているのも大きなトレンドの1つです。
マイクロブランドとは、高品質の商品を数百個単位で生産し、低価格で提供する小規模のブランドのことを指します。
商品をマス向けに生産するグローバルブランドの対義語です。
なぜマイクロブランドが流行っているのでしょうか。
その理由は、生産前に売上を正確に見積もる仕組みができたためです。
例えば、InstagramやFacebookなどの広告でCVR(コンバージョン率)を計測し商品が売れるかどうかを事前にテストすると、在庫リスクを大幅に下げることができます。
もしくは、クラウドファンディングで熱狂的なファンを事前に見つけ、受注生産で作れば必ず売れる仕組みを構築できます。
このように、生産して在庫が過剰に余ってしまうようなリスクを軽減できるようになったため、マイクロブランドが台頭してきているのです。
D2Cのトレンドを押さえてビジネスに取り入れるのが重要!
今回はD2C事業がトレンドになっている業界から、トレンドになっている理由、D2C事業共通のトレンドまで網羅的に紹介しました。
振り返りですが、D2C事業がトレンドになっている業界は以下の3つです。
- アパレル業界
- 美容業界
- 食品業界
アパレル業界に続くかたちで、美容・食品業界でもD2Cが流行り始めてます。
また、D2C事業のトレンドは以下5つでした。
- Amazonなどのプラットフォーマーからの撤退
- 老舗企業による新規D2C事業の立ち上げ
- リアル店舗を持たない小売企業の台頭
- 個人にパーソナライズされた顧客体験の提供
- マイクロブランドが商品を直接消費者に対して販売
ブランドの世界観を顧客に直接伝えるために様々な企業が新しいビジネスに挑戦しています。
世の中のトレンドを押さえて、自社のビジネスに活用してみてください。
より具体的なD2Cの売上アップ方法は「D2C事業で売上を伸ばすには?3つのポイントと成功事例を紹介」にて紹介しています。